私は古い人間なので、礼儀については多少意識しているほうではないかと思います。ただこうしたことは他者に押しつけるべきではないとも考えているので、批判的な意味ではあまり取り上げる気持ちがありません。失礼な行為というのはときどき見かけますが、私の感じではその方ご自身が「礼を失している」とは考えていないのではないかという気持ちがします。
ですから、他者に何か指摘されてそれこそはっとする、という状況なのだと思います。たとえばこういうことです。
エレベーターに乗る。先に乗っている方がいらっしゃる。私はビルの上階にあるお店をめざしている。どうやら他の方たちもそうらしい。よくある状況ですね。最後にエレベーターに乗った私は、下りてから後ろの方を無視していちばんにお店に乗りこむようなことはしないようにしています。順番からいって先に乗っていた方が優先されるべきだと思うのです。
しかし、そういうことをまったく意識されていない方もいますね。さっさといちばんにお店に入っていく。
とくに人気店なんかですと、並んで待たなくてはいけない。より慎重に順番というか秩序を守る必要があるような気がします。そういうところはじつはお店の方もよくご覧になっていて、こちらに気を遣ってくださってありがとうございますとお礼をおっしゃったりします。
あるとき模擬テストの業者さんの塾向けの説明会がありました。早々と予約を入れていたのですが、どうしてもという保護者の方(ふだん日本にいらっしゃらない)の面談が入ってしまって、行くことができなくなりました。
そこで業者さんにお電話をした。申し訳ないということと、資料はどうしてもほしいので御社まで取りにうかがってもよろしいでしょうかと訊いてみました。お送りしましょうか? と言われたのですが、こちらが予約を取り消すという失礼なことをしたわけですから、直接うかがうべきだと思いました。
私にしてみればそのあたりの風物や景観にもちょっと興味があり、休みの日にうかがってぶらぶら歩いてみるかとも考えていました。
するとーー驚いたことにーー業者さんがわざわざ説明会当日に教室(当時は池袋でした)までじかに届けてくださったではないですか。恐縮してお詫びとお礼をお伝えしたのですが、そこまでしてくださったのはこちらも失礼がないように事前にできるだけのことをさせていただいたからではないか。無断欠席だったらそこまでしてくださったかどうか。以前も書きましたが、司馬遼太郎先生のエッセイに「礼は心の花」とあります。自生する花ではありませんから、自分から意識的に創らないといけないですね。
2019.07.21 06:34
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