2014.11.30 07:20

 ばかみたいに将棋に熱中した時期があります。ちょっと病的でしたね。夢中になるというより依存症的な何かです。止まらなくなるのです。
 いまは自覚しているので大丈夫ですが、昔はコントロールできずに相当異常な経験を積みました。たとえばこういうことがありました。ある人と将棋を指した。夜の7時ごろ指しはじめて夜中になり朝が来た。その間、トイレに行くぐらいでひたすら将棋盤に向かっていました。そのまま指し続け昼になり午後になる。それでも何も食べずに指し続けました。結局その日は寝ませんでしたよ。
 
 相手も相手ですね。賭けたりはしていないのです。それなのにお互い夢中になる。止まらなくなります。
 あんな遊びのどこが面白いのですか? と質問されたことがあります。質問した方はまったく将棋を指しません。密室で小さな駒をちまちまとったりとられたりしながら何時間も俯いていて、楽しそうには見えないというのです。大自然の日ざしのもとで、きれいな空気を吸いながらのびのびと身体を動かしたほうがよっぽど楽しいのではないか。言われてみればその通りみたいな気もするのですが、面白いのだから仕方がないですね。
 
 受験期にこういうことがありました。授業中、私はある男と将棋を指していました。小さなマグネットの将棋盤で夢中で指した。そのためにいちばん後ろの席にわざわざ移動していました。担当の先生は温厚な感じで、あまり生徒の様子に注意を払うタイプではないので大丈夫だろうとたかをくくっていました。受験について頭から投げていたという事情もあります。
 あるとき、その先生が私たちに「そこ、いつもいつも何をしているんだ?」とおっしゃった。隠しているものを出してごらん。
 
 ちょうど私のほうに盤が来ていました。お互い指したら先生の目を盗んでさっと渡すということを繰り返していたのですが、ちらりと見えてしまったのでしょう。「出してごらん」
 私は仕方なく机の上に将棋盤を出しました。先生はしばらく沈黙し「ほう、この時期にそんなことを・・・」とおっしゃった。そのまま叱責の言葉も何もなく授業を再開されました。周囲の受験生も不思議な物体でも見るようにちらりとこちらを見ただけです。私は何だかよくわからないが、これはものすごく恥ずかしいぞと思いました。
 
 赤くなって下を向いていると隣の男が小声で「早くつぎの手を指せよ!」と催促してきました。
 その声を聞いた瞬間、いまの自分は将棋が指したいというより・・・どうやって生きたらいいのかわからなくなっているのだとぼんやり考えました。現在の自分は死んでいないというだけで、ろくに生きてもいない。その不安を何かで紛らわせたいだけなのだと。
 あの恥ずかしさは非常にレベルの高い感情だったと考えることがあります。十全に生きていない自身に対する恥ずかしさ。確かに人間ならではの感情ですね。
 
 
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長野先生
35年以上、中学生を教え続けてきました。生徒たちが日々の学びを通じて大きく成長できますように明るいヒントを発信していけたらと思います。

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